■2015年2月21日(土)
『センス・オブ・ワンダー』
2015年2月21日(土)10:30〜12:00
日比谷公園 緑と水の市民カレッジ
参加者 17名
今年はレイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」出版50年の記念の年であるが、読書会ではこれに関連した本を取り上げ、いろいろな視点から「センス・オブ・ワンダー」を考えていきたい。
今回は、「センス・オブ・ワンダーを探して」というタイトルの福岡伸一氏と阿川佐和子氏の対談集(大和書房)をもとに 子ども時代や生きていることについて考えてみた。担当の小川真理子さんが、この対談集のエッセンスを上手にまとめて分かりやすく説明してくださった。福岡氏は生物学者として、また阿川氏は小説家・エッセイストとして異なった道を歩んできたが、ともに子ども時代に美しいものや不思議なものに触れるという幸福な体験や大切な出会いをもっており、それが大人になった今もふたりの内部に生き残っていることがよく分かる。子どもの頃に得たセンス・オブ・ワンダーがその人を支え、その人の人生を豊かにするのであろう。
かつてドイツ生まれの科学者シェーンハイマーは、バランスを見つけながら絶え間なく動いているのが生命だとの説を唱えたが、福岡氏は生物学者の立場から、これを『動的平衡』と訳して機械論的に傾斜しすぎた生命観に警鐘を鳴らしつつ、この見方をヒントにしてより繋がりやバランスを重視した生物学を模索している。それでは、『動的平衡』とセンス・オブ・ワンダーはどう繋がってくるのか。小川さんは、センス・オブ・ワンダーは、自然の不思議さを感じることだが、死んでいる世界ではなく生きて動いている世界が対象。また、感動の対象を形づくっているのは分断された世界ではなく丸ごとの自然であると言う。地球は生命の糸で編み上げられた美しいレース編みで、人間もその編み目の一つ。このように考えれば、両者は共通するところがあるのかもしれない。
小川さんは、一人ひとりが自分のセンス・オブ・ワンダーを自分の言葉で紡いでいくことが大切と指摘する。そして、センス・オブ・ワンダーは自然界の不思議さや美しさに目をみはり感動するだけのものではなく、自然の恐さ、痛さ、痒さも体験すること、そして人間社会の素晴らしさとともに、矛盾や不条理などにも敏感に反応する骨太なものであってほしいとの上遠さんの意見(しおかぜ63号)に賛同すると述べられた。そのような骨太のセンス・オブ・ワンダーも、子どものころの感動や喜びによって耕された心の土壌で生まれ育まれるのではなかろうか。
(文責 井上)