■2016年6月18日(土)

    


自然を語る会
2016年6月18日(土) 10:30〜12:30
於:日比谷公園 緑と水の市民カレッジ
参加者 12名
担当 小川眞理子さん




今回は、ポール・ブルックス著・上遠恵子訳『レイチェル・カーソン』第8章を読みながら、
雑談形式で感想や意見を語りあった。

ここでは、1940年代後半、40歳前後の頃のカーソンの公私における自然との関わりが紹介
されている。そして、公私いずれにおいても、科学者、自然観察者としてのカーソンと、
文学者、作家としてのカーソンの融合を見ることができる。

魚類野生生物局に勤める彼女のもとで執筆・編集された国立野生生物保護地区についての
パンフレット(Conservation in Actionの12冊のシリーズ)は、一日の潮の干満や季節の
移り変わり中での野生生物と自然の美しさが見事に描かれている。また愛鳥家仲間との
交流のエピソードでは、彼女が自然界や生き物そのものに対してだけでなく、それを表現
する作品や文体にも強い関心をもっていたことを知ることができる。

「野生動物、水、森林、牧場――これらのすべては、人間にとって必要欠くべからざる
環境をかたちづくる部分である。その中のある一つを保存し、かつ有効に利用すると
いうことは、その他のものをも保存しなければ達成できないものなのである」と述べた
カーソンは、お互いに関連しあう生態系の網の目を意識していたに違いない。

また、アマチュア生物学者であり『ワシントンの春』の著者でもあるルイス・J・ハレ氏
の回想では、カーソンの人柄が垣間見えて興味深い。「私は、彼女が常に注意深く、他人を
通じ、またみずからも飽くことなく知識を求めつつあった人として思いおこすのである。」
というハレ氏のカーソン評は、その後、多数の専門家の助けを求めながら「われらをめぐる海」
の執筆に取り組むカーソンの姿を思い浮かべるとき、大いにうなずけるものである。

 カーソンは、「専門的な知識を持ち、しかも文学的な素養に恵まれているという両面を
備えていた。海について偉大な本を創作するに足る道具立ては、十分整っていたのである。」


(文責:井上正太)