■2016年9月17日(土)

    


自然を語る会
2016年9月17日(土)10:30〜12:00
於:日比谷公園 緑と水の市民カレッジ
参加者:11名
担当:井上正太さん


『レイチェル・カーソン』(ポール・ブルックス著、上遠恵子訳)11章
 

報告その1

『レイチェル・カーソン』の11章は、「島の誕生」である。前半は島ができる様子として、
1.バーミューダ諸島の形成の歴史 2.火山島の誕生の様子 3.世界の大きな火山島
というテーマで、後半は島に生物が移ってくる様子で、4.大洋の島々の生物 5.移住者
6.人間による島の環境破壊というテーマで構成されている。その一つ一つに井上さん
からの丁寧な説明が付け加えられた。

 まず、島の形成というところでは、ウェゲナーが大陸移動説を唱えたが、彼が気象学者
だったこともあり学界の支持を得られず、亡くなった後にその説が認められたとのこと。
大陸が移動する理由はその当時は分からなかったが、1960年代後半にプレートテクトニクス
理論へとつながっていった。カーソンが「島の誕生」を書いた時期にはまだこの理論は
知られていなかったので、当然のことながら本書にはそれによる説明はなされていないが、
プレートテクトニクスの説明を受けることによって、島の誕生の理解も深まった。
現在日本では西之島ができつつあり、この本の内容が身近に感じられた。

 島の生き物と大陸の生き物とは大きく違っている。そもそもどのようにして大海の孤島
に生き物が住むようになったのかが不思議である。そのキーワードは「移住」である。
樹木や草木で運ばれる昆虫や爬虫類、時にはサルもいるとのこと。しかし、移住先で繁殖
するためにはオスもメスもいなくてはならないはず、よほどの偶然があるのだろうか?
という疑問には、昆虫などは集団で暮らすので、移住も一緒に行われることが多いようだ
という意見があった。またダーウィンも『種の起源』で島の生物について述べており、
「カエルやイモリが島にいないのは両生類が成体も卵も海水につかると死んでしまうから」
と説明していることが紹介された。ダーウィンは島の生物の変化についても詳細な報告を
行っている。

 故意にしろ偶然にしろ、人間が生態系に与える影響は甚大で、自然の推移を突然人間が
乱してしまっているとカーソンは述べているが、これはまさしく今日的問題であると井上さん
が話された。全員深くうなずいて読書会を終わった。
                              (文責:小川真理子)

報告その2

 「島の誕生」は、地球科学(地質/海洋)、生物/生態学にも係わる壮大かつロマンチックな
物語である。陸から千キロ、いやもっと離れた大洋中の島々や孤島の誕生〜消滅など、驚異
と感動の物語である。そして、そこに移住し、誕生/進化した生き物への深い想いと、そこに
棲んだ生き物たち、特に「固有の種」の喪失に対する挽歌は、深く心に沁みるものがある。

 人間が持ち込んだ植物や家畜、難破船からの脱走ネズミ等々による島固有の生物の滅亡。
意図の有無を問わず、人間がいかに尊い自然を破壊したのか(今もしているのか)…

 カーソン(1907〜1964)は「島の誕生」の中でもチャールズ・ダーウィン(1809〜1882)に
触れており彼の影響が窺われる。井上さんは、ダーウィンの『種の起源』(1859)と対比する
形でレジュメを準備してくれたので、私も倣って、渡辺政隆訳、光文社古典新訳文庫
『種の起源(上)(下)』を入手した。いつか読み切りたい。
                               (文責:岩渕徹郎)

写真の出典
火山島は西之島(目次の写真も)出典:海上保安庁ホームページ
(http://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo18-2.htm)