■2016年10月15日(土)

    



自然を語る会
2016年10月15日(土) 10:30〜12:30
於:日比谷公園 緑と水の市民カレッジ
参加者 13名
担当 鈴木善次さん(関東フォーラム顧問)


     『レイチェル・カーソン』 ポール・ブルックス著 上遠恵子訳
              第12章 「思考の発展」


 『レイチェル・カーソン』第12章は、1951年に出版され数々の賞を受賞した「われらを
めぐる海」の次の作品となる「海辺」の発想から完成までのいきさつや当時の出来事に
ついて綴られた章である。
 企画のきっかけはカブトガニの配偶行動を誤解して(良心で)海へ戻してしまった人達
の行動を繰り返さないように海辺の生物に関する入門書の依頼を受けたことから始まった。
カーソンは「海辺」の随筆のために、旧友で画家のボブ・ハインズやシャーリー・ブルッ
クスと共に、コッド岬、メイン州、フロリダ州を訪れて、「海辺」の舞台となる砂浜、
岩礁、サンゴ礁などの海岸に生息している海洋生物に関する野外観察・採集を行った。
これらの体験を通じて、本の性格も企画当初の“生物の生活史の描写”から“生物の社会
を統一的に描く生態学的描写”へと変化し、最終的には「われらをめぐる海」と調和を
保つ作品となった。また生きている生物を観察しながら精密に描いたボブ・ハインズの
装幀と挿絵は「海辺」で欠かせない存在となった。
 この間に「われらをめぐる海」がベストセラーとなってカーソンは一躍名士となる。
この他、当時の出来事としてヘンリー・ベストン(カーソンが影響を受けたネイチャー
ライティング作家)への手紙。「海辺」に対するエドウィン・ウェイ・ティール(自然
主義者)からの賛辞が12章で紹介されている。
 担当者の鈴木さんはこの章を5つのセクションに分けてセクション毎に専門的な視点と
分析を交えてわかり易く丁寧に解説していただいた。また12章に登場する生き物の写真、
ボブ・ハインズ氏と一緒に海岸で海洋生物を調査しているカーソンの写真や「海辺」の
挿絵を紹介してくださり、理解が一層深まると共に、作品をより身近に感じることができた。
 テーマ毎に参加者の皆様と輪読を行いながらディスカッションを楽しみ、最後にベストン
への手紙の中で紹介されているカーソンが大好きなビリーチャツグミの鳴き声をYouTubeで
流し、美しいさえずりにしばし耳を澄ました。

                                (文責:柳澤)