■2016年11月19日(土)

    



自然を語る会
2016年11月19日(土)10:30〜12:30
於:日比谷公園 緑と水の市民カレッジ
参加者:12名


DVD鑑賞 NHKスペシャル 流氷“大回転”


今回は、2014年5月にNHKスペシャルで放映された『流氷“大回転”』のDVDを鑑賞した。
北海道のオホーツク海沖、冬になると押し寄せる流氷は、直径20キロに達する大きな渦を
えがくことがある。そして流氷の消える頃、この海域は魚や水鳥、シャチやクジラなど大量
の生き物であふれかえる。まさに、流氷渦(流氷“大回転”)がもたらす“生命の大爆発”
である。番組では、レーダー、定点カメラ、小型飛行機、砕氷船などを用いて調査・観測を
行う北海道大学の研究者たちの活動を追いながら、この大自然のスペクタクルを見事な
映像で紹介、流氷“大回転”と“生命の大爆発”のメカニズムを分かりやすく解説している。


渦の発生には、宗谷海峡から流れ込み北海道沿岸に沿って南下する宗谷暖流のエネルギー、
また“生命の大爆発”には、ロシアのアムール川流域の鉄分が大いに関係しているそうだ。
アムール川で運ばれ河口から海に流れ込んだ鉄分は、流氷に取り込まれてオホーツク海域を
移動し、硝酸の摂取や光合成を助けることにより植物プランクトンの大増殖をもたらす。
また、大きな渦は深海の栄養分を海面近くに持ち上げる作用もある。植物プランクトンの
大増殖は、大量のオキアミの発生をもたらし、それを求めてイワシなど様々な魚が集まり、
次から次へと食物連鎖で生き物が増えていく。産卵のためこの海域に集まる魚や、渡り鳥
たちは本能的にこの豊かな海域のことを知っているのだろうか。巨大な流氷渦と躍動する
生き物たちの姿を映像で見て、あらためて自然の不思議さと生命の美しさに感動を覚えざる
を得ない。


出席者からは、自然の驚異を称える感想や、地道な研究を評価する意見のほか、アムール川
流域の開発が今後流氷への鉄分供給に悪影響を及ばすのではないかとの懸念の声も出された。
また、地球温暖化は海洋循環や海流にも変化をもたらし、微妙な自然のメカニズムを壊して
しまう恐れはないだろうか。流氷“大回転”と“生命の大爆発”が、この先も永く続いてほしい
と思う。


(文責:井上正太)